"親プーチン派" であるとして批判され、オランダの音楽配給会社 Clone Distribution(クローン・ディストリビューション/レーベル:Clone Records)から自身の主催するレーベル Trip Recordings(トリップ・レコーディングス)との協力関係を切られてしまったロシアの人気テクノDJ/Producert、Nina Kraviz(ニーナ・クラビッツ)が、それに対する反論を自身の SNS にて表明した。

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Nina Kraviz は5月17日、ウクライナ戦争やそれに関する自身の姿勢への世間からの批判に対し、以下のように Instagram に投稿している。
 

決定論の遠地点を説明するように頼まれたら、私たちがたまたま住んでいる時代を例として挙げます。過去数十年間に私たちが関わってきたことの全ては、無秩序な嘘と憎しみの流れがピークに達しました。その理由は必ずしも明白ではなく、必然的に人々の間、国家間の暴力、不安定さ、そして不和につながります。

勢いは日々高まっているため、SNS  やメディアでは、ひどい出来事が日常的に混同されています。これらのケースのいくつかでは、これら全てが、個人的な価値観やライフスタイルなどの確立された信念と一致します。私たちはその一部になる運命にあります。

人間、ミュージシャン、アーティストとして、私は世界で起きていることに深く心を揺さぶられています。私の祖国とウクライナとの関係がどのようになってしまったかについて、ぞっとしています私はあらゆる形の暴力に反対しています。平和を祈っています。罪のない人々が死ぬのを見ることは、私を苦しめます。

私はミュージシャンであり、政治家や政党を支援することに夢中になったことは一度もありません。将来的にそうするつもりもありません。私は政治やそれが海だdす社会的プロセスを理解していません。ですから、SNS で何が起きているのかについて話すのは正しくないと思います。私の意見では、それは全てを消費する憎しみの程度を高める可能性があり、理解を助けるものではありません。ローマのストア派の哲学者、政治家、劇作家であるセネカによれば、一方の側がそれを支持することを拒否した場合、角質自体は消滅するでしょう。

ここ数ヶ月、私は憎しみに直面し、私に嘘をつきました。私の発言が Instagram に表示されなかったため、それが原因かどうかは分かりません。それは私を悲しませます。しかしそれは私にとって苦痛ではありませんでした。

音楽とミュージシャン、エレクトロニック・ミュージック、テクノ、ハウスシーンの指名は、境界線やパターンを分割するのではなく、完全に異なる人々を団結させることだと私はいつも信じて来ました。しなやかさが生まれるとき、彼らは両親も生まれた国も選びません。ですから、私のレーベル Trip Recordings で作曲やコンピレーションをリリースするとき、私にとって重要だったのは、生まれた国ではなく、アーティストの才能でした。私のレーベルのアーティストの作品を検閲しようとされたとしても、私は団結の原則に従い続けるつもりです。

良い音楽を作り、リリースし、演奏すること、それが私が最も愛することです。

ピース、

NK

Nina Kraviz のレーベルマネージャーは、Nina Kraviz と Clone Distribution 間の協力関係が崩壊したことを、Trip Recordings の最新のニュースとして明らかにしている。

4月中旬、Clone は特定のトラックタイトルの意味を訪ねました。現在の状況を踏まえて、レーベルはタイトルの説明に関与したアーティストからの引用を彼らに伝えました。

そして、"彼らの「心配と無礼な議論の後」、Clone はレコードの生産を停止した" と述べている。
Nina Kraviz のレーベルマネージャーはまた、彼女が「プーチン支持」「CCCP/USSR(ソビエト社会主義共和国連邦)」であるという見解についても反論を述べており「Nina のSNS から言及された、本人の了解を得ない暴露」であるとしている。

Nina Kraviz はサンディエゴの宇宙博物館を訪れた際に「CCCP」と書かれたTシャツを着用していたが、それについて Nina は「宇宙プログラムの成果について以外は、何も称賛していない」と述べている。
 
更にアメリカ最大級のフェス Coachella にて、プーチン大統領の切り抜きパネルと共にポーズを取っている写真に関しては「2014年のフェスティバルで利用できる多くの切り抜きパネルの一つ」であり「Nina 以外にも多くの人々がプーチン大統領の切り抜きパネルと共に写真を撮っていた」としている。また、プーチン大統領の切り抜きパネルに描かれた銃身に花が刺さっている絵は「1967年以来の平和の象徴」であるとしており「なぜこれらの切り抜きパネルを提供したのかは、Coachella サイドに問い合わせるべきである」と述べている。

槍玉に挙げられている上記二つの写真については、現在 SNS から削除されているが、change.org ではその写真を引用した画像が使われた、デトロイト在住のウクライナ人らにより、Nina Kraviz にデトロイト開催の Movement festival への出演キャンセルを求める署名活動まで展開されている。


Nina Kraviz のこの一連の騒動は、過去の特に他意のない写真がほじくり返され、ウクライナ戦争問題でセンシティブになっている欧米諸国の世論によって悪い解釈を与えられてしまっているような印象を受けるが、それらの批判に対する Nina Kraviz の煮え切らない態度と無関心が、一層のこと欧米諸国の反ロシア感情を逆撫でしているように思える。

上記の写真に関しては2014年時点のものなので、その際にはまだプーチンパネルと共に写真を撮ったところで問題はなかったはずであり、更にいえば銃身に花がささっているのはレーベルマネージャーの言う通り "平和な時代" を表しているようにしか見えないが……。

「私はアーティストだから政治は分からないし語りたくない(関わりたくない)」という Nina の意思表明は、基本的に左寄りな思想が強い音楽シーンで、しかもご時世では NG なのかもしれない……。