音楽再生プラットフォームの Spotify(スポティファイ)による2023年にインディーズアーティストへの再生回数に応じた報酬は、前年比で8%減少するとのことだ。

この結果は、ニューヨークを拠点とする音楽融資のプラットフォーム「Duetti」による2023年のインディーズアーティスト向け音楽経済報告書の発表によるもので、独自のデータセットから抽出された数百万のデータポイントと、公開されているリソースを組み合わせて、複雑なストリーミング状況を分析した結果となる。

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これによると、Apple、YouTUbe、Amazon はいずれも支払い率を引き上げたが、Spotify のこの動きは上記のストリーミング・プラットフォームとは真逆の動きとなっており、ストリーミング業界全体で計算すると、1再生回数当たりの収益は2%減少し、1,000ストリームあたり2.95ドル(約418円)となる。
この減少は、ファミリープラン、カップルプラン等の割引プラン、更にアーティストがロイヤリティ率を下げることで自動再生やラジオで再生されやすくなるという "Discovery Mode" といった Spotify のサービスの普及によって引き起こされているとのことだ。

Spotify の支払い率の低下は、Apple、YouTube、Amazon による支払い率の増加等、2022年〜2023年の業界のサブスクリプション価格の値上げによるプラスの寄与を上回るものとなっている。
YouTube と Apple Music はインディペンデント・アーティストのウォレット・シェア(顧客1人1人が一定の期間に使用したお金のうち、自社製品がどのくらいを占めているかを表す指標)を拡大しているが、それでも Spotify の占めるウォレット・シェア率55%は依然として各種音楽配信プラットフォーム中で最も高いものであり続けている。
なお、Spotify、Apple、YouTube、Amazon の上位4つのプラットフォームが、インディペンデントアーティストの収入の96%、米国内のアーティストの収入の80%を生み出しているとのことだ。

ちなみに TikTok ビデオ作品の1,000回再生がインディーズアーティストにもたらす収益はわずか50セント、つまり約71円にしかならず、Apple Music での1,000回再生は約810円なので、比較すると13分の1の収益にしかならない。

ジャンルごとに違ってくるストリーミング料

ストリーミングにより発生するロイヤルティは、ジャンルによって大きく異なってくるとのことだ。
ストリーミング料金の変動は、さまざまなプラットフォームとジャンルにわたる視聴者の国別の組み合わせにより決定するとのことで、Spotify ではカントリー・ミュージックのインディーズアーティストの収益は1,000回再生あたり3.5ドルで、一方のラテン系インディーズアーティストの収益は1.1ドルと、70%近くも低く、ウォレット・シェアに関して言えばカントリーミュージック・アーティストの38%が最低で、ロック・アーティストの66%が最高であるとのことだ。
Apple は、特にジャズ、カントリー、R&B、ヒップホップ、クリスチャンのインデックスを多く表示しているが、一方のYouTube はラテン、ヒップホップ、R&Bのインデックスを多く表示している。

インディーズアーティストは平均して収入の26%を配信料に費やしている

更に、ストリーミングで収益を出すにしろ、アーティストは手数料等でストリーミングサービスに対し、平均して収益の26%を配信料として支払っているという。
手数料は全てのジャンルで収益の20%を超えており、業界全体が前払いやその他のサービスに依存していることが伺える。これらのサービスには、通常15 %以上の配信手数料が必要となる。